店長ブログ BLOG
きみはぼくのともだち
社長が自宅ですき焼きを振る舞ってくれた。
「今日は奮発して天野精肉店から和牛のロースとモモを仕入れてきたけん」
社長が手際よく醤油と砂糖と酒を目分量で合わせてさっと味を整えて、あっという間にすき焼きが出来上がった。
「もう火が通ったけん、はよ食べまいよ」
すみません、いただきます!
まさに和牛といった感じで本当にめちゃくちゃいいお肉だった。と同時に怖くなった。
18年も一緒にいるから社長の狙いが手に取るようにわかってしまう。
このすき焼きを食べないという選択肢はもちろんない。むしろ食べたい。ただ食べてしまうと、気がついたら新しいストーリーの主人公になってしまう。
そして、それを望んでいる自分がいるのも事実かもしれない。
そして、社長が切り出した。
「海外出店についてどう思う?」
さすが、社長だ。それ以外だったら僕は興味を示さなかっただろう。
どう思う?の言葉には、やるのはあなたやけどな、というニュアンスがすでに含まれている。
海外出店とはつまり、ベトナム出店のことだ。ずっと温めてきた。
もちろん、やりたい。やりたいけど、死ぬほど面倒だ。とてつもない苦労が待っている。
店長は僕の後継者であるヒエウ君と決まっている。彼が母国ベトナムで手打ちしている姿を誰よりも見たい。彼にその舞台を用意してやりたい。
でも無茶苦茶に大変だ。僕は自分で言うのもアレだが、これまで本当に頑張ってきた。そして今、シンボルタワー店を立ち上げてこれまで以上にハードな毎日を生きている。シンボルタワー店の店長をやりながらベトナム出店を成功させるという難題をクリアしなくてはならない。考えただけで気が遠くなってしまう。
すき焼きを食べ終わる頃にはベトナム出店を決意していた。
もっと言えば、すき焼きを食べる前から、何年も前から決意していたのかもしれない。それを今日のすき焼きで確認しただけだ。
自宅に帰るとベトナム出店のことで頭がいっぱいになってしまい、眠れなくなった。
目を閉じてベトナム店のイメージをああでもないこうでもないと巡らせながら、久しぶりにハナレグミを聴いた。
「きみはぼくのともだち」がハナレグミの一番好きな曲だ。
小さなあかりが灯された気がした。
