店長ブログ BLOG

2026 / 11 / 05  22:37

ファンタジスタ

ファンタジスタ

 古賀さんがお店に寄ってくれた。

 「おうどん瀬戸晴れ」の店主であり、僕の兄弟子でもある。 

いつも「オリーブ豚のカレーうどん」を1.5玉で食べてくれる。関わる人を虜にする少年のような笑顔も健在だった。 

古賀さんのお店はもう説明が必要ないくらいの超人気店になり、日本一のうどん激戦区で特異な輝きを放ち続けている。

香川県で唯一の完全予約制を導入したり、去年は手打ちの技術を競う大会「SANU-1 グランプリ」の初代王者になったりと話題を集めている。

出会ったのは18年前で、古賀さんは当時22歳ということになる。

初めて会った日のことは今でも覚えている。本店で社長と面接した日だった。手打ちうどん職人になる夢を叶えるための第一歩を踏み出した日。

本店の入り口で待っている間、厨房から覗き込むように僕を見ていたのが古賀さんだった。

うどんを混ぜている姿を見て、僕は直感的に「あっ、あの人がこの店の若手で一番の職人なんやろうな」と感じた。 

その直感は当たっていたどころか、22歳の古賀さんはすでに天才だった。すべての技術が卓越していて、真似のできない領域にいた。

 うどん職人は2つのタイプに分かれる。

うどんを愛しているうどん職人と、うどんを愛していないうどん職人。

うどんを愛しているうどん職人はこだわりが強く、美味しいうどんを作るためなら何だってできる。そして、自分のうどんが世界一だと信じて毎日頑張っている。

僕は間違いなくうどんを愛しているうどん職人だ。

しかし、古賀さんはそのどちらでもない。

古賀さんは、うどんに愛されているうどん職人だ。うどんの神様に選ばれたような人だから、なりたくてもなれない。

おそらく20年に一人くらいしか出てこないと思う。

古賀さんは「おうどん瀬戸晴れ」で、粘りの強い九州産の小麦を100%使用し、さらに超多加水で生地作りをし、究極の打ち立て茹でたてで提供し「むにゅもち」という讃岐うどんの新たなジャンルを作り上げて時代の寵児となった。

これまでの常識や決まりごとにとらわれず、異次元の角度から新たな枠組みを作ってしまう。まさにファンタジスタという言葉がピッタリだ。

流行っているからといって「おうどん瀬戸晴れ」の食感を真似しようと思っても絶対に無理だ。卓越した技術とセンスを持つ古賀さんにしか作ることはできない。さらに、それを飄々とやってのけてしまうから、たまったもんじゃないと思ってしまう。

僕は古賀さんに勝ちたいと思ったことは一度もないし、うどんに愛されたうどん職人に勝てるわけがない。そして悔しさもない。

古賀さんというファンタジスタと同じチームでプレーしていたということを、僕は今でも誇りに思っている。

次の時代を代表するファンタジスタは今どこにいるのだろう?そして、次のファンタジスタはどんなうどんで世界を驚かすのだろうか?何より、どのお店で修行を積むのだろう?

どうせなら僕のお店においでよ。僕は君の前のファンタジスタを知ってるから。